西郷従道邸 (88 画像)
木造総二階建銅板葺のこの洋館は、1880(明治13)年に、西郷隆盛の弟西郷従道が、フランス人建築家のジュール・レスカスにより東京上目黒の自邸内に建てたものである。西郷従道は、明治初年から度々海外に視察に出掛け、国内では陸・海軍、農商務、内務等の大臣を歴任、維新政府の中枢に居た人物で、在日外交官との接触も多かった。そのため「西郷山」と呼ばれる程の広い敷地内に、和風の本館と少し隔てて本格的な洋館を華やかな社交の場として設けたのである。
第二次大戦前に西郷家の敷地は旧国鉄等に売却され、洋館は一時プロ野球の国鉄スワローズ(現・ヤクルトスワローズ)の合宿所として利用されるなどしたが、博物館明治村(愛知県犬山市)に譲渡され、1964(昭和39)年に移築された。現在、跡地は菅刈山公園として開放されている。
半円形に張り出されたベランダ、上下階の手摺等デザインもさることながら、耐震性を高めるための工夫がこらされている。屋根に重い瓦を使わず、軽い銅板を葺いたり、壁の下の方にレンガをおもり代わりに埋め込み、建物の浮き上がりを防いでいること等にその現れをみることができる。
レスカスは1872(明治5)年には生野鉱山の建設に従事、同6年には皇居の地盤調査にも参加している。また、ドイツ公使館や三菱郵船会社の建物を設計し、明治20年頃まで建築事務所を開業していたが、その傍ら、日本建築の耐震性についての論文をまとめ、自国の学会誌に寄せている。
二階各室には丈の高い窓が開けられている。フランス窓と呼ばれるもので、内開きのガラス戸に加えて外開きの鎧戸が備えられ、窓台が低いため、間に鉄製の手摺が付けられている。 窓上のカーテンボックス、手摺、扉金具、天井に張られた押し出し模様の鉄板、そして流れるような曲線の廻り階段等、内部を飾る部品は殆ど舶来品と思われる。特にこの廻り階段は、姿が美しいだけでなく、昇り降りが大変楽な優れたものである。

●菅刈山公園(西郷従道邸跡)

・旧所在地:東京都目黒区青葉台2-11-25
・愛知県犬山市内山1 博物館明治村1-8
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